父、娘を尾行する

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くたびれた中年男でも、暴走族でもなさそうなので、私はひとまずホッとした。 そこで、はたと思い直す。 ホッとなんてしてていいのか?  男などみな野獣。 高校生といったら、最も危険な年頃ではないのか。 自分の学生の頃を思い返してみても、一番に興味がある時期だった……ように思う。 アレコレ考えているうちに、ふたりは切符売り場の前に移動していた。 夢香がはしゃいだ声をあげる。 「植物園なんて、久しぶり!」 植物園か。 高校生としては健全なデート場所だといえるだろう。 私は、ホッと息をついた。 いや待て。 問題はそのあとだ。 いっぱい歩いて疲れたね。少し休もうか。などと言って、いかがわしい場所に連れ込まれないとも限らない。 ……さすがに高校生でホテルはなかろうが、カラオケボックスとか漫画喫茶とか、あの少年の自宅とか。 植物園まで、電車とバスを乗り継げば三、四十分はかかるだろう。 車ならばその半分の時間でいける。 私は一度自宅に戻ることにした。 愛車のセダンに乗り込んで、急ぎ植物園に向かう。
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