父、娘を尾行する

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順路をすすんでいくと、まず熱帯の植物が展示されているホールに出た。 湿度が高く、南国の鳥の声のようなBGMが流れている。 少し歩くと、鮮やかなピンクの花が、顔前に迫ってくる。 傍らのプレートに 「オシロイバナ科ブーゲンビリア属。花びらのように見えるのは、実は葉っぱの一部で苞(ほう)と呼ばれるものです」 と説明が記されている。 そのプレートに、「あけてみてね!OPEN」と書かれた、黄緑色の封筒が麻ひもで結わえてある。 封筒を開いてみると、「ブーゲンビリア 情熱/あなたしか見えない」と書かれた名刺大のカードが入っていた。 なるほど。 これが企画展か。 こうして入館者の興味をひこうとしているのだろう。 ブーゲンビリアの花言葉は、明るい南国のこの花に、あっているようにも思えた。 さらに進んでいくと、「上をみてね。実がなっています!」という案内板があった。 見上げれば、大きな葉に隠れるように、黄緑色のバナナが実っている。 そのバナナの木の説明書きのプレートにも、封筒がしつらえてある。 中のカードには「バナナ 風格」とあった。 フルーツにも花言葉があるらしい。 なるほどと感心する。
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