初めまして! のメンバー紹介(1)

1/1
前へ
/29ページ
次へ

初めまして! のメンバー紹介(1)

 初めまして、かな? それともお久しぶり、さ? こんにちは! 私はアーミー=S=トニトルスっていいます!   白くて小さな丸い耳に、同じく白に近い銀色の髪を三つ編みのおさげにして、黒い丸い瞳と、先っちょが少し黒いけど、他は真っ白のしっぽを持つ獣人ネオテールの十六歳の女子です! よろしくお願いします!   って……いきなり終わってしまったじゃないか。うーん。これじゃ、なんで私がここにいるかとか、初めての人はぜんっぜん、わからないよね。ちょっとさかのぼるけど、前回起きた出来事も踏まえて、少し詳しく、お話させてもらうね!  えっとお。今、私たちがいるこの都は、王都アマデトワールっていうネオテールが住む世界の中で一番大きな都市なんだ。でも私の出身はここからだいぶ北西に行った小さな山村マロニエという所になる。  二年前、星の形をしたペンダントを残し、事故で両親がこの世を去ってしまってから、私は母方の祖母、小さなカフェを営むおばあちゃんの家に引き取られることになり、マロニエの村に引っ越すことになった。  マロニエは人の出入りが滅多にない小さな山村でね、よそ者の私はつまはじきもの……寂しかったけれど、おばあちゃんもいてくれたし、読書好きだった私は、お話の世界にのめりこんでしまえば、あまり気にならなくて、何とな〜くやってこれていた。そうして、やっとこさ村に馴染んでこれたかな? って思えた頃、「魔法検診」が、学校の校庭で行われることになったんだ。  あ、魔法検診っていうのは、ネオテールで十六歳になった子供全員が受けなければならない身体検査のことだ。私たち、獣人ネオテールは生まれつき、土、水、風、火と四つあるうち基本属性のうち、どれか一つの属性の魔力を持って生まれてくる。十六歳にもなれば、その魔力を魔法として使えるようになるのだけど、中には使えなかったり、力を暴走させて大怪我してしまう子もいる。そんなことがないよう、王都の決められた検査員が、各村や、町を定期的に訪れて、検査をしてくれることになっているのだ。  でも本当は決められた四つの属性以外の、変わった魔力を持つ子は危険人物とみなされ、王都に連れていかれ、生涯幽閉されるんだなんて、噂もあったりして……。  とまあ、ここまで話せばなんとなく分かっちゃうと思うけど、私こそがその四つの基本属性以外の魔法を使える子供だったりする……。それがバレて急遽、王都アマデトワールに行き、ある仕事に従事し、世界や、悪魔、魔法について学ぶようにと、王様から命令が下されたんだ。  ちなみに私が使える属性は「雷」。そう、あのピリってくる電気の魔法だ。でも威力は全然なくって、自分の足や手にかけることで、運動能力を上げる、という地味な使い道以外はなかったりするんだな、これが。あ、あとはサクヤに力を渡したりとか、かなあ。  なんだけど……。  私は実感が全くないのだけれど、基本属性外の力は千年前、ネオテールを苦しめていた「悪魔」を倒す唯一の手段になりうるものでありながら、同時に世間では恐れられるものらしくてね……あ、それについては話すと長くなっちゃうから、サクヤの紹介をする時、改めて説明させてもらうね!  とまあ、王様の直々の命で、アマデトワールに召集された私は、指定の寮に寝泊りしつつ、魔法とか世界のことについて、ある部署で仕事をしつつ、学ぶことになった。その指定寮がここ「かがやき荘」で、職場というのが王都の市庁舎の一角にある「遺跡調査課」っていう部署になる。  で、遺跡調査課っていうのは何をする所なの? そもそも何を学びにきたの? って疑問を持つ人もいると思うのだけど、話が長くなっちゃうから、それについては上司のオウルさんの話をするときに追々するとして……。  とりあえず部署の同期のメンバーの紹介をすましちゃおうかな。  えっと、私の同期は二人プラス前回の冒険で新しく加入したサクヤの三人なのだけれど、とりあえずは私の横でぐうぐう寝ているこの子から。  彼の名前は、レト。本名はレト=ミゴット。出身は私の村よりさらに西の、病院がたくさんあるイエルンという町。ふわっふわの柔らかな金色の長髪に、緑色のまんまるのよく動く瞳。うす茶色の大きなたれ耳、ふさふさの毛の長いしっぽをしてて、見た目美少女にしか見えない。だけど実際はなんと男の子! 年齢も私より一つ下の十五歳なんだ。とはいえ、男子とは思えない華奢な身体に白い肌、洋服もいつも白とか薄いレモン色とかのワンピースっぽいローブを着るものだから、どこへ行っても女の子に間違えられてしまう。それぐらい美少年なんだよね〜。でも女子に間違えられてしまう理由はそれだけじゃなくて、すごい秘密が彼にはあるんだ。  あ、これは部内の秘密だから、大きな声では言えないのだけど、満月の日には、なななんと! 不思議な魔力のせいで一日限定、本物の「女の子」に変身しちゃうんだ! 加えて魔力は人の傷を治すという摩訶不思議なもので、その力は世にも珍しい「光」の属性なんだそうだ。   聞く話によると、彼の家系は代々、その力を持っているらしく、王都も了承済みなんだって。だから彼が生まれた時、すでにご両親が王都に報告済みだったらしく、レトは検診を受けることなく、今年王都に来いと、お達しが来て、そのまま遺跡課にやってきたそうだ。  女の子の時はさらに彼、いや、彼女? の魅力があふれ出ちゃってねー、って言うのも恥ずかしいのだけど、その……胸のボリュームが、す、すごいんだよね……女の私が圧倒されるくらいなの。でも性格は男子のままでしょ? 大飯ぐらいで、マイペース。あけすけなところは相変わらずだからして、毎っ回、満月の日は、私とラーテルさんは、レトの恥ずかしい行為を止めさせるのにてんやわんや……(笑)。まあ、それも彼の魅力のうちなんだけれどね。  ってことで、名前が出たところで、お次はラーテルさんを紹介しようかな? そう思い立って、私は食堂を見渡した。でも、やっぱり。彼女の姿はない。うーん、今日もかあ。いやね、最近、食後の自由時間になると、物思いにふけった表情で自室に帰ってしまうことが多くて、ちょっと心配なんだよね……。  そう、ラーテルさん、彼女もレトと同じ、私が王都に向かう際の場所で一緒になってから、ずっと共に行動している大切な同期、仲間の一人だ。  すらりと背が高く、細く長い手足、ツヤツヤと輝く真っ黒なストレートロングヘアーに、所々に入る銀色のお洒落なメッシュ。紫色の切れ長の瞳、薄くて整った唇に、シュッと引きしまったアゴ。黒くて丸い耳に、小さくて控えめな短毛のしっぽ……言葉使いも、身のこなしも上品で、まさに名家のお嬢様! を絵に描いたような素敵な女性。それがラーテル=カデル・デ・イオネスコ、ラーテルさんなんだ〜。  ラーテルさんの出身は、レトのいた町からさらに西、ウグルという草原が広がる町で、織物や刺繍といった布製品の交易で有名な場所。ラーテルさん自身、とっても手先が器用で、自分の小物やハンカチに素敵な花柄の刺繍を入れていたりする。そう! 私もこの前ハンカチにバラの刺繍を入れてもらったんだ! ピンク色で大柄の可愛らしい模様で、お気に入りの一枚になってしまったんだよね。  彼女の年齢は私たちより上で十八歳。ラーテルさんは魔法が全く使えなくて、王都から十六歳以降、何度か召集がきていたのだけれど、お父様が首を縦に振らず……でも今年の召集には応じることになったのだそうだ。そのおかげでラーテルさんに出会えて、私はとてもラッキーだったんだな〜って、内心彼女のお父様に感謝していたりするんだけどね。  魔法は使えないラーテルさんだけれど、身体能力はずば抜けて高く、あんなに細い身体のどこに? と思うほどのパワーで、大型の武器を振り回し、冒険中は前衛をかって出てくれている。もともとの武器は動物の皮を張った太鼓に似た鈍器だったけれど、今は寮母のエルクさんに借りて、剣術を修行中。まさに戦乙女という言葉はラーテルさんのためにあるんじゃないかって思うほど! 頼もしい姉みたいな存在の彼女が私は大好きで、憧れの人だったりもするんだあ。  でも……前回の冒険で所属している課の上司のオウルさんが、友人のサクヤを助けるためとはいえ、私たちを目的と違うダンジョンに誤導したことにいち早く気づいたラーテルさんは、オウルさんと言い合いになり……その後、ゆっくり話も出来ぬまま、オウルさんが出張で旅立ってしまったことを、内心すごく気にしているようで。連絡が途絶え、二週間過ぎたあたりから、みるからに元気がなくなってしまって……。今日の夜、ラーテルさんの都合が良さそうだったら……声をかけてみようかな……。 「歴史書って、マジ胡散臭えのな! ってか、エルクのやつ、この内容でよくオッケーしたなぁ。いくら酒樽詰まれたんだアイツ、コワっ!」  で、同期三人目。思い悩む私のことなど全く気にならないらしく、ずっと騒いでる新メンバーのサクヤを紹介しよう。さっきから私の前でぶつくさ言いながら本を片手に眉間にシワを寄せている同世代の男の子、彼がサクヤだ。前回の冒険で、王城の真下にあるダンジョンに、私たちが訳あって閉じ込められてしまった時、八方塞がりで、どうしようもなくなった私は、仲間を助けるため彼を目覚めさせた……それで、紆余曲折あり、結局彼も、王様の命令で私たちと一緒に遺跡調査課で働くことになったのだ。  今日は黒のTシャツにジーパン。ケミストルマッシュに切りそろえた黒髪、左耳にはいつも黒いひし形の黒い石のついたピアスを下げている。整った眉に、よく動く二重の黒目、口も大きくて、鼻筋も通っているし、背も高いし(170はあるかな?)、もしマロニエの学校に彼が転校してきたら一躍人気者になってしまうであろう程、カッコイイ。話上手だしね、でもぉ……ほら! 言ってるそばから、サクヤはポイッと本を向こうへ放り、肘をつき手の甲に顎を乗せ、にこりと私に微笑んでくる。妙な雰囲気、イヤな予感。 「でも、アーミーの愛らしい朗読が聞けたからヨシとすっか。邪魔者は寝たし、よかったら俺と二人っきりでもう少しお話し……」 「結構です! 間に合ってます!」  ほらあ! 油断も隙もない! 私は慌てて席を立ち、サクヤが放り投げた本をつかむと、本棚へとそっこく避難した。実は彼を助けた時、年が近いというか、彼の昔の知り合いのモモちゃん? とかいうヒトと私が似ているからなのか、妙に懐かれてしまって、ことあるごとにその、い、今みたいな変なアプローチとか、スキンシップ? とかとってこようとするから、油断ならないんだ! まったくもう!  とまあ、あんまり冷たくするのもかわいそうかな、って思う時もある。というのも彼、ほら。私も今説明しなかったけれど、耳やしっぽを持っていなくて。そう、つまり獣人じゃないんだ。  彼は「悪魔」なんだ。過去の話とか、自分についての話を彼、したがらないから、私も聞かないようにしてるんだけど……。そう、ついさっきも話に出したこの「悪魔」についても、ちょっと説明させてもらうね。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加