初恋

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 少し古くなった写真立てには、随分若い日の私たちが二人並んで笑顔を作っていた。白いカーテンの隙間から差し込む秋のカラカラとした陽の光を受けて、ガラスが淡く輝いている。  それは、懐かしい思い出の煌めきだろうか。あまりの眩しさに、見えなくなった思い出を、私は一体何で埋めればいいのだろう。  ポッカリと空いてしまった心の隙間。きっと、そこを埋めていてくれたのは君なのだ。あの頃より皺の増えた君の寝顔を見つめながら、柄にもなく感謝の言葉を口ずさみそうになる。  君がふと目を開けたのを見て、私は慌てて言葉を飲み込んだ。 「あなたは誰?」  毎朝、目覚めるたび、君は私を見てそう言う。 「おはよう」  そう声をかければ、少し怯えた様子で君は毛布にしがみつく。ほっそりとした腕に力を込めて、小さな身体を震わせている。いつも通りの反応に、私はこみ上げる悲しみを抑え込み、優しい笑顔を浮かべる。  それから私は自己紹介をするのだ。私は君の夫だと。  信じられない様子で部屋を見渡しながら、君は写真立てを見つける。 「それはね。君と私だ」
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