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僕は小関さんにお礼を言って、図書館へと入る。
海とはLINEのやり取りをしているし、写真を見る限りでは変わったような感じはしなかった。
僕は首を傾げながら階段を上がり、図書館の勉強机を見渡す。
その一角に、本を並べて勉強している海を見付けた。ほんの何ヶ月かなのに、俯いた海の顔が大人びて見える。
そっと近くに座り、その様子を眺めた。
何かを調べながらノートにまとめる横顔。
問題と参考書を見つめる真剣な瞳。
考え込んで、綺麗な唇にシャーペンのお尻を当てて小首を傾げる仕草。
何かを思い出したように資料を捲り、何か唇を動かしてノートに書き写す姿。
全て、初めて見る海の姿だった。
少しして、海はスマホを見ると慌てて片付け始める。何冊かの本を抱え、海が本棚へと移動したのを見て、そっと着いて行った。
本を戻す海にそっと近付き、最初の一冊を戻す手にそっと触れて見た。
すると海は慌てて
「あ、すみません」
って僕の顔を見た。
見て、目を見開いて手に持っていた本を落とした。
「え?え?」
パニックになっているみたいで、僕の顔を凝視している。
僕が海の落とした本を拾い集めていると、海は我に返って、慌てて残りの本を集めている。
そして本を元に戻すと
「和哉……さん?」
って呟いた。
「うん、ただいま」
そう言って微笑むと、海は突然、自分の顔を両手で叩いた。
そしてもう一度僕を見つめると、そっと僕の頬に触れようとして、図書館だと気付いて僕の腕を掴んだ。
荷物を無言で片付けて、肩掛けバックを肩に掛けると歩き出す。
「海?黙って帰って来て、怒ってる?」
必死に声を掛けると、少し歩いた人気の無い場所に着くと僕を抱き締めた。
「怒るわけ……無いじゃないですか!」
そう言って、僕の頬を両手で挟んで見つめる。
「ずっと、会いたかったです」
目を細めて、僕を愛しそうに見つめる海の瞳に胸が苦しくなる。
「あそこで抱き締めたいのを抑えるのが必死でしたよ」
優しく微笑む海に、僕は涙を浮かべて
「僕も会いたかった」
そう答えて、僕達はその場で抱き合った。
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