小さな奇跡

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「…やさん……ず……や…ん、和哉さん」 昨夜の激しい情事に疲れ切った僕の身体を、海が揺すって起こしている。 「…るさい!もう少し寝かせろ!」 怒って叫ぶと 「寝かせてあげたいのは山々なんですが、チェックアウトの時間もあるので…」 って、海が困ったように呟いた。 顔を見上げると、肌艶が良いわ〜。 さぞかし、満足頂けたのだろうよ! 恨みの視線を向けると、海は叱られた子犬のようにしょんぼりとした顔をしている。 「お前…」 声が別人のようにガッサガサの自分にも腹が立つが、僕がこんなに疲弊しきっているのに、生き生きしているこいつは化け物か? 平然としているこいつに腹が立って仕方が無い。 恨みの視線を向けていると 「すみません。自制が出来ませんでした」 小さくなって謝る海に、仕方ないなぁ〜と思ってしまう僕は、すっかりこいつに絆されてしまっているんだろうな。 「お前…、少しは加減てものを覚えろ」 そう呟いてゆっくりと身体を起こす僕を、健気にも補佐してくれる。 それだけで胸がキュンとしてしまうあたり、僕も重症だな。 苦笑いした僕に、海が 「何処か痛みますか?」 って聞かれて 「あぁ?全身痛いわ!特に下半身!感覚無いわ!このアホ!」 海の頭にチョップをすると 「本当に…すみません」 って落ち込んでる。 僕は大きな溜息を吐いて 「誕生日の主役が、そんな顔すんなよ。まぁ、煽った僕も悪かったし」 そう言って、ベッドに座って僕を見つめる海の首に手を回してキスを求める。 抱き締められて、そっと唇が触れる。 好きな人とのキスは、それだけでとっても気持ちが良い。 溶けてしまいそうな気持ちでキスを交わしていると、部屋のドアがノックされた。 「おい、そろそろ支度しろ!下で待ってる」 小関さんの声に、現実に引き戻される。 「タイムアップだな」 そう呟くと、海がギュッと僕を抱き締めて 「会えるのは嬉しいですけど…、又、離れるのが辛いですね」 切なそうに言われて、そっと頬に触れる。 「後、3ヶ月だ。そんなのすぐだよ」 僕の言葉に、海が唇を塞ぐ。 「和哉さんを、この腕に閉じ込めてしまいたい。でも…それはあなたと、あなたを命懸けで守った人を裏切る事になる。だから、我慢します」 唇が離れ、強く抱き締めると海がそう呟いた。 「海。僕は昨日、海に全てを捧げたんだ。何処に居ても、何をしていても…僕は海のモノだよ」 「和哉さん…」 お互いの額をコツンと当てて、僕達は微笑み合う。 このまま時が止まれば良いと、願わずにはいられなかった……。
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