不器用ちゃんとその笑顔

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 どんな仕事でも、人を幸せにすることはできるのかもしれない。まともに取り合う必要なんかない――そんな案件なんて、本当は一つもなかったのかもしれないと。もちろんイカレたクレームはある。話が通じないような相手もいると感じるのは事実。でも。  きっと杉崎さんは、どの案件であっても――それをストレスに感じることなんて、きっとないのだろう。 ――考えてみようかな、僕も……もういっかい。自分にできること。  後日。  僕は、コールセンター宛に、いくつも手紙が届いていたことを知るのである。手紙の整理は僕の仕事ではないので知らなかったが、どれも殆どが名指し――杉崎さんへのお礼の手紙であったのだという。  彼女のことを詳しく知ってから、僕はほんのちょっぴり、ちょっぴりだけど仕事上の優先順位を変えることにしたのだった。なるべく短く、同じだけお客様一人一人の“心”に向き合う対応をするために。  以前より少しだけ明るい気持ちで、今日も僕は電話を取っている。 「お電話ありがとうございます。●●コールセンターの、八嶋(やしま)でございます!」
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