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「本当のことを話してあげる。貴方は真面目な会社員なんかじゃない。」
「本当は女遊びが趣味の浮わついた男」
女は答えていく。
誰だ
「貴方が単純で助かったわ。」
いったいこいつは誰なんだ。
「まさか」俺はスピーカーを凝視した。
「お前、噂の橋本なのか?そうなんだろ?」
反応はない。むしろ反応したくなさそうだった。
図星なのか、それとも
女は言った。「失望した」と。
先程聞いた声とは恐ろしいほどことなっていて、俺自身は「しくじった」と強く後悔した。
「バイバイ」
煙が充満し始める。
あ、もうこれはダメだ。遠退く意識の中で女が実際に近づいてくるのがわかった。
「付き合っていた彼女の名前もわからないなんて。死ねよ。」
「死ねよ。」その言葉が今まで聞いた言葉の中で一番深く心に突き刺さった。
「お前も彼女いたじゃん。えーと、確か同じ部署の。」
そうか、
あれは俺の恋人だったあいつだったんだ。
すべてを悟ると同時に意識は完全に闇の中へと消えた。
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