勧誘

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たいして飲んでいないからか千鳥足にもならずに、ちょうど日が変わった頃に居酒屋を出た。 この地域でも特に栄えている通りを人を避けながら潜り抜ける。 「明日やばいかな。」 一人暮らしをしているマンションまではさっきの居酒屋から歩いて15分。 遠くにマンションが見える。 見えたとたん、急に足が重くなった。 何かの魔法であそこまで飛んでいきたいとも思った。 あれ、フラフラする。そんな飲んでたっけ。 自分は大丈夫と思っていても、端から見ればただの酔っぱらいだと言うことに俺は気づいていなかった。 その時 「そこのお兄さん!大丈夫ですか?」 一段と高い声が俺の耳に響く。 その声が聞こえたとたん俺の体はガクンとうなだれた。 誰かが体を支えてくれている。 けど、 重いまぶたが少しずつ下がってきて その後のことは覚えていない。 重苦しかった目蓋が急に軽くなる。 頭が痛い。完全に二日酔いだ。 そんなに飲んでいないと思っていたのに。 無意識にかなり飲んでいたのかもしれない。 確か居酒屋を出て・・・ まったく思い出せない。 「あっ!確か誰か声をかけてくれて・・・。」 そう呟くと同時に俺は体を起こした。 「は?」 まわりは見たことのない、やけに殺風景な部屋。 しばらく経ってビジネスホテルだとわかった。 もしかしたら複数名がここに運びこんでくれたのかもしれない。 机の上に書き置きがあった。 『体調は大丈夫でしょうか。 昨晩通りで倒れておられました。住所がわからなかったので、数名でここに運びました。 鞄やスーツなどは近くにあるはずです。 では、お仕事頑張ってください。お酒はほどほどに。』 筆跡から見るに女性のようだった。 ものすごく申し訳ない。 後悔の念が渦を巻く。 壁にはスーツのジャケットがかけてあった。
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