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よしっ、これだ。
私はそっとガラス玉を拾うと、リチャードへと見せてみる。
「これは……これを拾うためにしゃがんだのですか?……運がいいですね。異世界の方はそういった力もあるのでしょうか」
何とか誤魔化せたかなと、ブツブツと呟く彼からそっと離れると、私はまた歩き始めたのだった。
言葉がわかるってこういうときに出るんだね、あぁ、気を付けないと。
そしてその夜、私は湯あみを済ませると、部屋へ戻る。
眼鏡を棚の上に置き、そっと顔をあげると、ガラスに映り込む自分の姿をじっと眺めた。
この世界の服を着ているからだろう、里咲の面影はなく、エリザベスにしか見えない。
「何だか不思議な感じ。里咲なのに、リサみたい」
そんなどうでもいい言葉を呟いた刹那、突然扉が大きく開いた。
私は反射的に振り返ると、そこにリチャードの姿。
「緊急事態ッッ、えっ、なっ、リサ……様?」
彼は私を見つめ大きく目を見開くと、その場に固まった。
まずいと思い、咄嗟に眼鏡を手にしたその刹那、焦げ臭い臭いが鼻を掠める。
彼の後ろから立ち上る黒い煙。
階段に薄っすらと赤い炎が目に映った。
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