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城から近衛騎士が集まり、辺りが騒然とする中、私はというと、リチャードに担がれたまま、少し離れた丘の上に運ばれていた。
北の塔が赤く燃え上がる姿を背に、彼はそっと私を地面へ下ろすと、腕を固く掴んだ。
「あなたは……エリザベス様なのですか?」
違うと、慌てて首を横へ振るが、時すでに遅し。
言葉を理解しているのはもちろん、エリザベスを知っていると自白したようなものだ。
「やはりそうなのですね……。何度かそう思うことはありました。もう一人の彼女とあなたではあまりに違いすぎる。あの方が食べ方を知らない料理をあなたは聞くことなく完璧な作法をしていた。それに仕草や立ち振る舞い、そういったものもこの世界になじみすぎていた。とどめは本日のあなたの行動。あのタイミングでガラス玉を見つけたなんて胡散臭すぎます。それよりも、なぜ最初に言わなかったのですか?なぜ知らないふりをしたのですか?あなたが居なくなって私たちがどれほど心配したと思っておられるのですか?聖堂に入り突然いなくなったあなたを……ッッ」
彼は苦し気に顔を歪めると、私を強く引き寄せた。
懐かしい彼の匂いに、私は涙が溢れだす。
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