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雨の週末に咲く青と白
ユウちゃんの神経を疑った。
出かけようと、俺の肩を揺さぶってくるが、窓の外は雨が降っている。それも小雨どころか昨日の夜から降り続く長雨。雨の音で落ち着いて寝れないと文句すら言ってたくせに。働きすぎて外出のタイミングも分からなくなったのか。
「外見てみなよ、どう見ても不要不急の外出は控えるべきでしょう」
ついに解けた自粛要請になぞらえて返したつもりだったが、彼女は一つため息をついて「何もわかってない」と手に持っていた雑誌を広げて見せてくる。
「雨だから出かけないと」
見開きは、満開の紫陽花が両脇に広がる石段の写真だった。ページの中央には、その石段のある寺の名前が印字されていた。鮮やかな色のコントラストが目を引く。
「あれ、ここから近いよね」
「そうだよ、見て。傘さしてる」
写真の中には傘を手に石段を昇る女性がいた。
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