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 「ああ、うん。持ってきたからいいよ」というと、ビニール袋に手を突っ込んで、ビールを二本、取り出した。一本を私の前に置き、「飲む?」と聞いてくれる。  「ううん。喉乾いてないから、いい」と首をふると、うん、と頷いて、自分の分のビールをカシュッと小さな音を立てて開けた。  グビグビ、と喉を鳴らしてビールを飲む。ぷはっと息を吐くと、ようやく落ち着いたみたいだった。口を手の甲で拭うと、鞄の中から赤い表紙のノートを取り出す。  「南由(なゆ)、最初に俺と会った時のこと、覚えている?」  「うん、もちろん。あの時は怖かったけど、紘くんに会えたから、今はそのためだったのかなーって思っているけど」  「俺もそう思ってた……。けど、南由。部屋にいる時、誰かに見られているような気がする、って言っていただろ?」  「うん……。でもなんとなくだよ? 気のせいかもしれないし」  「気のせいじゃなかったら? ちゃんと調べないと。こんなに……」  痩せちゃって、と紘くんは言おうとしたのだと思う。確かに急に痩せたことは確かだ。半年かそこらで八キロは、もともと標準体型の私にしては痩せすぎかもしれない。痩せて綺麗になった、という段階を超えてしまっているので、紘くんは言葉を飲み込んで言わなかったのだろうな。  「心配させて、ごめんね。でも大丈夫だから」  「大丈夫な訳、ないだろっ?」
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