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俺は最初、アキちゃんは頭がおかしいんじゃないかと思った。
最近読んだ小説に出てきたが、無慈悲に残虐行為を繰り返すサイコパスなんじゃないか、と疑った。
「痛い?」
「はっ、い、痛い……」
「血が出てる」
「…え?」
俺は冬場でも年中同じような短パンを履いていた。俺が生活行動のほとんどを完結させている部屋には、そんなズボンしかなかったからだ。
「骨が折れて、皮膚を突き抜けてる。それで、血が出てる」
「そ…そうなの?」
「うん」
アキちゃんによって、俺の怪我の具合が鮮明に描写され……また吐いた。
「オエッ…はぁ、はぁ」
一体この時間はなんなんだ?
助けを呼ぶなりなんなりして欲しい。それか、一言も喋らずに何処かへ消えて欲しい。
「あの…さ…助けて」
ついに俺は言った。それで、そのサイコパスな少年を見上げた。少年はよく見れば同じ学校の名札をつけていて、だったら見捨てないよな、と思った。何故か。
「いいよ。その前に、ちょっといいかな、藍崎」
アキちゃんは最初から俺の名前を知っていた。藍崎瑛斗が、俺の名前だ。
「え?」
俺はビックリして、それまで感じていた吐き気がどっかに行った。
アキちゃんが急に、仰向けの俺に覆いかぶさってきた。それで、折れた右足の膝関節に触れる。
「いぁ、痛い…」
涙が出た。それも、ボロボロと。今までにこんなに泣いた事はないと言うくらいに、涙が出た。
サイコパスだ。この男の子は、サイコパスだ。
男の子は骨が少々突き出した膝の、少し上。膝に近い太腿の内側を……
噛んだ。
「〜〜〜っ、はぁ、あ…うぁ」
俺は痛みを忘れた。男の子に噛まれてから、痛みを上回る別の感覚に身体が震えた。
確かに痛みは感じる。でも、それ以上に違う感覚が押し寄せて来て。
俺は気を失った。
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