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gift1. 魔法使いのお膳立て
昔々あるところに、日高明織という娘がおりました。
よく働く娘でしたが、竹を割ったような性格です。なかなかハッキリした物言いをしてしまうので、継母や継姉達から再三嫌がらせを受けておりました。
ただ、明織は文句は人一倍言いましたが、めげることなく言いつけをこなしてしまうので、継母達は面白くありません。
明織はと言えば、無理難題をこなすことが仕返しになると踏んでいたので、涼しい顔をして難題を片付けては、自分のキャリアアップを図りながら彼女達の悔しそうな顔を見て留飲を下げるという、実に逞しい日々を送っていたのでした。
そんなある日、お城で舞踏会が開かれることになりました。
継母達は舞踏会へと出かけて行きましたが、明織は自宅でお留守番です。
でも、別に悔しいとは思いませんでした。
だってお城にいる王子様―― 三輪 景汰とは幼馴染で、気晴らしに行く森で度々顔を合わせていたのですから。
「いってらっしゃ~い」
意地悪な継母達が出掛けたので、静かで優雅な時間が過ごせると大喜びしながら玄関の扉を閉めると、どこからかサンタクロースの衣装を着たお爺さんが現れました。
「明織や。舞踏会に行きたいだろうから、心優しい儂が行かせてやろう」
「いえ、いいです。行きたくないので」
怪しい。押し売り商法だろうかと、明織の心に警戒心が宿ります。
「そんな遠慮せずとも」
「遠慮なんてしてません。時間勿体ないので、もういいですか?」
出てって下さいと言わんばかりに冷たくそっけなくあしらうと、お爺さんは嘆きました。
「今時の若者は冷たいのぅ……。どれ、チョチョイのチョイっと」
そのお爺さんはサンタクロースではなく魔法使いだったので、明織の意思を無視してドレスアップさせてしまいました。
「ちょっと、行かないって言ってるのに!!」
” 魔法の押し売りなんて聞いたことないわよ ” と、明織はお爺さんを睨みつけますが、当のお爺さんはどこ吹く風です。
「まぁまぁ、ここは人助けと思って」
「人助け?」
お爺さんことサンタ魔法使いが言うには、お城で景汰王子が「好きでもない女と結婚できるかぁ~!!」と頭を抱えて悩んでいたのだそう。
「景汰が?」
聞き返せば、サンタ魔法使いが神妙な顔をして頷きました。
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