思い出2

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思い出2

最寄り駅まで徒歩15分。家賃が安いからと、このアパートに決めてしまったことを後悔している。 転勤に次ぐ転勤。どうせ長居はしないと、築30年6畳ちょっとはケチりすぎたか。 「ほい、ココア。」 「ありがとう…今日は冷えるね。」 桜の開花予想が流れ始めたというのに、今日は真冬並みに冷え込むそうだ。 「今日は出かけたくないね、寒いもん。」 彼と久々に被った休日だというのに、ボロアパートでせせこましくくっついて、窓から空を眺める。 「…今月いっぱいでここも引き払うんだよな…それで、これからどうするの。」 「…どうもこうもないよ。最初から決めてたでしょ?」 「べつに別れなくてもいいんじゃないかな…ほら、新幹線使えば1時間ちょっとだし。工夫すればちゃんと時間は作れると思うんだ。」 「ううん、だめ。…もう分かれ道まで来ちゃったもん。あなたが、”じゃあ、また。”と言って、私が”…うん、またね。”って言って手を振って別の道を進んでくの。振り返ったりはしない。…だって、自分の泣き顔なんて見せたくないもん。」 彼は、何も言わなかった。 こんな私を受け入れてくれた、素敵な人。 …でも、ダメなものはダメ。 だって、もう私の気持ちがここにいないもの。 私の春は、別れとともに過ぎていく。
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