春は別れの季節

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春は別れの季節

ここに越してきて、2年が過ぎた。私には、また転勤の辞令が来た。今度の春は、少し肌寒くなりそうだ。 空は黒く濁っている。夕方から雷雨になるそうだ。それをアパートの階段に腰掛け眺めている。 2年間、私はまた性懲りもなくふらふらとしていて、なあなあで男と付き合い、自然に消滅するを繰り返していた。 「…寒いなー。」 寄り添ってくれる人は、今回はいない。 …ナァーォオ… 珍しいこともあるもんだ。はじめが近寄ってきて、私の膝に頭をスリスリしてきた。 そっと、その頭に手を置く。 …ナァァー… 大人しく、撫でられている。出会って2年、初めてのことだ。 はじめはしばらく私の膝の上に陣取り、私たちは一緒に空を眺めた。はじめは見た目よりもずっと軽かった。 雨が、降りだした。雨粒が大きいのか地面にはねる音がよく響く。 はじめはスッと立ち上がり、軽やかに雨の中を歩いて行った。振り返ることなく、走ることなく、軽やかに歩いて行った。 「…自由だなー。」 はじめを見たのはそれが最期だった。 私は新たな場所へと旅立った。
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