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髪が白くもさもさしていて、目は真っ黒くて大きい。鼻も長く、ハッキリ言って誰だかわからない。
違うのは輪郭と、坊主の亮の髪が白髪の坊主にしかなっていないだけ。
「亮、ちょっとスマホ貸して」
言いながら亮の手からスマホを取ると、いくつか操作をした。
今撮影したものと、彩が犬になってる写真、お義母さんが撮ったであろう正月の写真を自分に送った。
「写真が欲しかったんだ?」
真がスマホを覗く。
「なんとなく」
「ふーん」
特別思い出を形にして大切にしたいわけじゃない。
ただ、自分が育った環境には、壁一面の写真はなくて、初めて見た時は結構衝撃的だった。
ただ、何度も見ているうちに、なぜか赤ん坊がみんな同じポーズで寝ていたり、成長過程が面白かったり、一緒に写っている大人たちにも変化があったりして、笑えた。
そうやって、自分にはなかったものを見せつけられると、少しだけいいなと思ったりするのが人間だろう。
だが、自分の幼い頃の写真なんか見たって面白くもないし、真と亮の赤ん坊の頃は彩の実家で見て知っている。
そもそも、それらを飾ったところで、俺の思い出じゃあない。
千堂がやたらと写真を送ってくるせいだ。
写真がないことに、漠然と寂しさを感じるのは、彩が千堂のそばにいることも理由の一つだろう。
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