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「お母さんは写真飾るの嫌いなの?」
「は?」
「今朝、亮が言ってた」
「なに、急に」
月曜日。
子供たちが学校から帰る前に、家に戻った。
千堂さんは今週いっぱい有休を取って、家事と育児に専念する。
この二日間で、おむつ替えは問題なくできるようになったし、ゲップをさせる時の力加減が微妙だけれど、ひとまず危な気なく抱っこは出来た。沐浴が一番不安らしいけれど、ドボンとお湯に落としたり、大きく身体を揺さぶったりしなければ、多少雑でも大丈夫だと言ってきた。
週末、また様子を見に行く。
昼にお母さんからメッセージが入っていて、私は鍋を持って実家に来た。
赤ん坊の世話に疲れて、ご飯支度どころじゃないだろうと、豚汁とちらし寿司を作ってくれていた。
「さ、いいよ」
私が鍋の入った袋、お母さんが寿司桶の入った袋を持つ。
二つ抱えては帰れないから、お母さんが持ってくれた。
「智くんが言ってたらしいよ」
「なにを?」
「写真のこと」
「ああ。千堂さんがやたら子供の写真を送ってたし、お母さんもめちゃくちゃ飾ってるからかな」
こぼさないように両手で抱えて、ゆっくり歩く。
昨日までの雨空と打って変わって、今日はすっかり晴れた。
明日からは気温が上がるらしい。
「飾らないの?」
「今更子供たちの赤ん坊の頃の写真とかねぇ」
「そう言えば、写真だけでも撮らないの?」
「なんの?」
「結婚の」
「ああ」
「それを飾れば?」
「……うん」
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