1.妻に贈る、母の日

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「つーか、こんな時間にそんなに食ったら、胃もたれすんじゃない? 年なんだから」  真は、栓を開けて冷えたビールで喉を潤す俺を横目で見て、言った。彩が軽く握った拳で、真の頭を小突く。 「真!」  一緒に暮らす前には単なる照れ隠しだと思っていた真の悪態が、最近では素なんだとわかった。彩曰く、俺が怒らないことをいいことに調子に乗っている、らしい。  俺的には、年頃の男なんてこんなもんだろ、くらいにしか思わないが、彩は違うらしい。  半分以上は、俺に母親を取られた焼きもちだと思うけど……。 「冷えた刺身見てたら腹減ってきたなぁ」  わざとらしくそう言うと、チラッと俺を見る。 「『お父さん、ちょーだい』って可愛く言ったら食ってもいいぞ」 「――はっ!? 言わねーし! キモッ!!」 「こら! 真!!」  このやり取りも、定番になっている。  二人がどう思っているかはともかく、俺には楽しい一幕だ。亮がいれば、更に盛り上がるが、さすがに小学生は寝ている時間だ。  それに、亮は刺身を食べない。  いや、タコは食べられるようになったって言ってたか。 「いいからさっさと寝なさい」  彩が鍋の火を止め、蓋を開ける。味噌の匂いに腹が鳴る。  茶碗とお椀が並べられ、箸を持つ。 「真、刺身半分食っていいぞ」 「言わねーよ?」 「わかってるよ」
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