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「――驚くに決まっているでしょう? 今までのあんたの彼女と全然違うタイプだし、年上だとは聞いていたけど、まさか上司だなんて。戸惑って当然でしょう」
千堂って親に彼女を会わせたりしてたんだ、なんてどうでもいいことを思った。
千堂の元カノなんか知らないが、完全な憶測で言えば、可愛い系なんだろう。
千堂の母親は、心の底から呆れたように「はあぁぁぁ」とため息をついた。
「隼。あんた知ってるの? 挨拶に来た後、凪子さんが私に電話してきたこと」
「は!?」
「『年齢のことも立場のことも、息子さんの結婚相手としてご期待に添えず申し訳ございません』って言われたわ」
「は……あ?」
知らなかったらしい。
「隼、大人になりなさい。あんたがそんなんじゃ、凪子さんの苦労が目に見えるわ。挨拶に来た時も、私たちが凪子さんを傷つけるようなことを言うんじゃないかと一人であたふたして、大事なことを話せないままさっさと帰って行って。凪子さんが大切なのはよくわかったけれど、あんたのやり方は色々と誤解を生むし、面倒なの」
あたふたしてる千堂が、容易に想像できる。
それは彩も同じようで、かなり微妙な表情。
このまま立ち聞きするのもどうかと思い、エレベーターのボタンに手を伸ばした時、ポーンと鉄の箱が到着した。
中から出て来たのは、冨田。
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