2.父の日のプレゼント

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 上階の乗客を迎えに行っていたエレベーターが、すぐそこまで降下していたことに気が付き、俺は彩に身振りでそれを知らせた。  このままでは、降りて来た人間と鉢合わせる。  入れ替わりで上に行くかと冨田に聞こうとしたが、彩に止められた。 「あのね、隼。私と凪子さんがいい関係を築くには、あんたがしっかりしなきゃいけないの。本当なら、結婚の準備期間や子供が生まれるまでの間に親しくなっていくんだろうけど、もうそんな悠長なことを言っている場合じゃないでしょう? 産後間もない凪子さんにストレスを与えないように、母さんを悪者にしてもいいから――」 「――待ってください!」  冨田が千堂母子の前に飛び出す。  もちろん、俺と彩もばっちり見つかった。 「凪? なんで――」 「――子供はどうしたの!」  千堂母が冨田に詰め寄る。 「あ……。ね、寝ています」 「だからって!」  ポーンとエレベーターの到着が知らされ、両親と手を繋いだ五、六歳の男の子が出て来た。 「部屋に戻りませんか」と声をかけたのは、彩。  俺は先に箱に乗り込み、〈開〉のボタンを押した。続々と乗り込む。 「凪子さん。いくら寝返りもしない乳児でも、泣き声も聞こえない場所に置いて来てはダメよ。おっぱいを吐いて窒息することもあるし」 「すみませ――」
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