2.父の日のプレゼント

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「――それに、あなたも産後間もないのに、そんな薄着で出て歩いてはダメ。産後の肥立ちが悪くて、なんて今の若い人には笑われるかもしれないけれど、本当に無理が後々身体を壊しかねないのよ」 「はい……」 「母さん! そんなに捲し立てることないだろ」 「イヤならあんたがしっかりしなさい!」  定員六人乗りのエレベーター内で繰り広げられる嫁姑、母子の会話に、俺と彩は完全に居場所をなくしていた。  彩は心配そうに冨田に寄り添い、俺は壁に寄りかかって眺めている。  他人事だから口を出す気はないが、強いて言えば、冨田のこんなにしおらしい姿は初めて見た。  そうこうしているうちに、エレベーターは七階に到着した。  すぐさま冨田が玄関の鍵を開ける。  千堂母に言われて心配になったらしく、足早に子供たちの元へ向かう。  さて、どうしたものか。  こうなれば、彩のシッターはお役御免だろう。  俺は玄関前で、一行の背後から声をかけた。 「千堂さん」  千堂母が振り返る。もちろん、千堂も。 「ご挨拶が遅くなりました。息子さんの同僚の溝口です。妻共々、いつもお世話になっております」  お世話をしているのは九割がた俺と彩だが、この場合は仕方がない。 「母さん。部長の溝口さんと、奥さんの彩さん。彩さんは元同僚で、凪子とも親しいんだ」  ワンテンポ遅れて、千堂が俺たちを紹介する。
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