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「まぁ! まぁまぁ、こちらこそご挨拶が遅くなりました。隼の母です。息子と嫁がお世話になりまして、ありがとうございます」
深々と頭を下げられ、俺と彩もそれに倣う。
「彩。冨田の様子を見て、荷物持ってこい」
「あ、うん」
彩がもう一度千堂母に頭を下げ、家の中に入って行く。
「もしかして、子供たちのお世話をお願いしていたお友達ですか?」
「あ、はい」
「それはっ! 息子がご面倒をおかけいたしました」
今度は恐縮して頭を下げる。
「いえ。妻もと――凪子さんを心配しておりましたし、子供の世話も慣れているので。ですが、お母様がいらっしゃったのでしたら、今日は妻は連れて帰ります」
「わざわざご足労を頂きましたのに、申し訳ございません」
ペコペコと頭を下げる母親の横で、千堂がオロオロしている。
急に嫁と母親の板挟みになり、不安なのだろう。
俺は、自分にその心配がないことにホッとした。
「そんな急いで帰らなくても……。お、お茶でも飲んで――」
「――俺までいたんじゃ冨田が疲れるだろ」
「けど、彩さん――」
「――千堂」
千堂の言葉を遮って、『腹括れ!』と目で訴えると、さすがに察したのか黙った。
千堂母が子ども扱いしてしまうのも納得だ。
すぐに彩が自分の荷物を持って出て来た。冨田も一緒に。
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