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「痩せてても、隠れ肥満とか糖尿病とかなるらしいぞ?」
「それ、なに情報?」
「週刊誌の表紙」
「俺よりお父さんの方が心配した方が良くない?」
「……真、なんか機嫌悪いか?」
「別に……」
真の機嫌が悪いのにはちゃんとわけがある。
が、智也は知らない。
秘密だから。
昨日のお寿司屋さんでお母さんから提案された父の日のサプライズプレゼントに、真は反対なのだ。
だが、三対一で可決され、その後から不機嫌というわけだ。
父の日まで二週間。
さすがにずっと不機嫌ではないだろうけれど。
「お母さんのいいことって?」
亮の隣に戻った私は、ふふっと笑った。
「朝ね、会社の人に会ったから一緒に歩いてたらね、その人が具合悪くなっちゃって」
「俺が会った人?」
「そう。乾さん」
今朝は、電車を降りるまで智也と一緒だった。別れた後、私は乾さんと会った。
彼女は人事部所属で、入社の時に手続きをしてもらった。
三十歳手前の彼女は、年齢より幼く見え、ぽっちゃりしていて、柔らかい雰囲気を纏っている。
彼女と会った時、智也が私のランチバックを持ったままだったと思い出し、届けてくれた。その時に、紹介したのだ。
「でね。乾さんがしゃがみこんじゃった時に、イケメンが助けてくれたの」
「イケメン?」
「うん。三十……くらいかな。爽やか~で可愛い感じなのに、背が高くて、華奢な感じはしなかったなぁ」
思い出すと、またニヤケてしまう。
「同じ会社?」
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