2.父の日のプレゼント

75/93
5582人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
「みたい。初めて見たけど、乾さんの席まで付き添うって言ってたし。誰だろう。なんかね、いいスーツ着てたと思うの。よくわかんないけど、ぱっと見でもわかるような」 「なにそれ、イケメンは安物を着ないみたいな先入観じゃない?」と、真が鼻で笑うかのように、冷たく言い放つ。 「だな。一万のスーツ着てても、イケメンだと十万くらいに見えるんだろうな」と、智也も同調する。  私の価値観や想像を全否定された上、バカにされて腹が立つ。 「いーじゃない! 私はそう思ったの! 見てて癒されるって言うの? いい気分だったの!」 「自分が優しくされたわけでもないのに」 「誰にでも優しいのはいいことでしょう? 真! あんたも、誰にでも優しい、頼れるそこそこの男になりなさい!」 「はっ!? そこそこってナニ!」 「息子をイケメンだなんて言ったら、親バカじゃない」 「けど、そこそこってのはなぁ」と、なぜか智也が真の肩を持つ。 「俺もそこそこになる!」  空気の読めない坊主頭の男子児童が主張する。 「亮は……。人のことより、自分のことをちゃんと出来る男になって」 「なんで! 俺、学校では女子に優しいんだぞ。荷物運ぶの手伝ってあげたりするんだぞ!」  それは、いいように使われてるんじゃ……。  恐らく、智也と真も同じことを思ったろうが、口には出さなかった。 「そうだね。亮も、人に優しい人間になろう。そこそことか、どうでもいいから」 「……なんか、ディスられてる感が半端ないんだけど」  亮の言葉とは思えない言い回しにギョッとする。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!