2.父の日のプレゼント

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「衝撃過ぎて覚えた」  智也が口にしたのは、先週あたり私が読んでいた小説だ。  スマホで読んでいるから、どこかに置きっ放しにして見られたなどではないだろう。 「スマホ、見たの?」 「いや? お前が画面を消さずに置いてあったスマホにうっかり指が当たって、読みかけの小説が表示され、画面上にタイトルが見えただけだ」  事実だろう。いや、『うっかり』だけは嘘っぽいけれど。 「読む? 面白かったよ? タイトルはアレだけど、御曹司の御曹司であるが故の悩みとか、彼に見合う女になりたいとぽちゃこがダイエットする様子とか、奥が深かった」 「それで奥が深いのか」  意味がわからないと言わんばかりに、智也が目を丸くする。 「とにかく! ってゆーか! 小説はどうでもいいのよ。私は、乾さんを心配して――」 「――次に会ったら、イケメンのこと聞くだろ」 「……イケメンのことじゃなくて、体調のことを聞く」 「その流れで、助けてくれたイケメンのことも聞くだろ。ついでに、どういう関係かとか。イケメンが御曹司か、とか」 「御曹司かなんて聞くわけないでしょ!」 「どうだか……」  最近、ベッドに入っても小説を読んでたりするから不機嫌なのかな。  昼休みや電車の待ち時間に読んでいた小説が、もう少しで終わるなら読み終えてしまいたいと、寝る前に読む。  智也が構って欲しくてちょっかいを出してくるのも気に留めないこともある。
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