2.父の日のプレゼント

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***** 「凪子さんから聞いたんだけど、千堂さんの育休はなしになったんだって?」  千堂のマンションで千堂母と鉢合わせてから四日。  育休中の千堂が朝から出社し、予定していた残りの育休をやめにすると言った。  母親が冨田と双子の面倒を見ているから、仕事に行くように言われたのだと言う。 「ああ。まとめて取らなきゃいけない決まりはないから、都合のいいように飛び飛びで休むらしい」 「千堂さんのお母さんが来てくれるなら、その方がいいだろうね」 「冨田の方は大丈夫なのか?」 「うん。お姑さんともそれなりにうまくやってるみたいよ」  俺は茶碗に残った一口分の白米を箸ですくい、口に入れた。 「ご馳走様。悪かったな、遅くに」  今日は久しぶりに帰りが遅かった。  新入社員の全体研修が終わり、各支社へ辞令が下りた。今後は、各支社にて適性を見極めるための研修が始まる。  そのローテーションを各部長で話し合っていた。  繁忙期の人事部を除いた部署で割り振り、営業部では来週からの一か月間、男女一名ずつを受け入れる。  その後も一人か二人ずつを受け入れていき、新入社員の配属が正式決定するのは九月一日。  そんな感じで、今日は日付が変わる前ではあったが、ギリギリでの帰宅になった。 「彩の会社(トコ)は新人研修とか、どうしてるんだ?」  入社間もない彩が知っているかはわからなかったが、一応聞いてみた。
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