2.父の日のプレゼント

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「どっかの研修センターで最低限のマナーとか教わって、希望部署で研修してるんじゃなかったかな?」  そう言いながら、彩が俺の食器をシンクに運ぶ。 「企画部(ウチ)には来てないんだよね、新入社員。今年は開発部と研究職の希望者が多かったみたい」 「そうなんだ」 「うん。企画は少数精鋭で頑張ろうって話してたの」 「パートのおばさん、って言われてた彩が精鋭の一人とはねぇ」 「なによ」と、彩が俺をじとっと睨む。 「バカにしたんじゃねーよ。ただ、FSP(ウチ)には痛手だったなと思ってさ?」 「あら、嬉しい」と、少し芝居がかった笑顔。 「間違っても新人を怒鳴って泣かせちゃダメよ」  俺は返事の代わりにため息をついた。 「あ、ね? 来週末ってしっかり休めそう?」 「ん? 何かあったか?」 「父の日。みんなで食事しようってお母さんと話してたの。ちょっといいトコロで」 「わかった」  父の日か……。  今まではカレンダーに小さく書かれた行事の一つでしかなかったのに、自分がその対象なんだと思うとくすぐったい。 「……欲しい物、何かある?」 「ん?」 「父の日」 「ああ……。思い浮かばないな」 「考えておいて?」 「ん」  母の日は俺からと子供たちからとプレゼントしたが、俺が考えるべきは子供たちからのプレゼントだろう。 「因みに、父の日のプレゼントの定番ってなんだ?」  祖母に育てられた俺は、父の日という行事には全く縁がなかった。 「ん~……」と唇を尖らせながら、彩は食器を洗う。  俺はコップに半分残った麦茶を飲み、答えを待つ。  食器を洗い終えてお湯を止めた彩は、手を拭き、顔を上げた。
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