1.妻に贈る、母の日

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 なんだかんだと言いながらも、俺と顔を突き合わせて飯を食うことを嫌がらないのだから、俺はそれで十分だ。それに、この年頃の男の子と父親の『普通の関係』がどんなものかなんて知らない。俺自身はこの年頃に、まともに父親と顔を合わせたことも、言葉を交わしたことも、飯を食ったことも記憶にない。  それに比べたら、こうして悪態をつきながらも会話をして、一緒の皿を突いてるだけで、十分親子らしい。  俺の、『親子』の定義が他人のそれより緩いのかもしれないが、俺がそれでいいと思っているのだから、いいだろう。  それに、真との関係が良好だと信じうる理由が、もう一つある。  結局、三切れあった中トロは、二切れが真の腹に納まった。 「真、どこの高校狙ってんだ? まだ四月なのに、頑張り過ぎじゃないのか?」  飯の後、ざっとシャワーを浴びてベッドに入った。先に寝ていていいと言っているが、彩は必ず起きていてくれる。そして、毎朝俺より先に起きる。  まさに、妻の鏡、だ。  素直に、嬉しい。  だが、頑張り過ぎていないか、心配にもなる。 「どこでも行けるように、だって」 「……すげぇな」 「……」  彩がうつ伏せて枕に顔を埋める。 「なした?」 「……なんか、ムキになって頑張ってるみたいで……」 「なんで?」 「わかんないけど」
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