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近くに築四十年の売家もあり、新築を依頼するなら更地にする費用はサービスすると言われたが、彩が頷かなかった。
この家の間取りが気に入ったと言っていたが、最終的には金額を気にしたのだと思う。
前の結婚で新築を建てた時には欲が出て予算を大幅にオーバーし、何とか予算内でおさめようとする彩と、一生に一度の買い物で妥協する彩に怒った旦那とで、かなり険悪になったらしい。
『それでも、気に入らないものに何千万も払うようなバカなことはしないから大丈夫』だとお義母さんに言われて、彩の好きなようにさせた。
引っ越した夜、真と亮とチャンネル争いをしていた俺は、彩が微笑みながら涙を拭うのを見逃さなかった。いつか彼女が話してくれた『理想の家族』に一歩近づけたような気がして、嬉しかった。
こうして、俺は名実ともに『一家の主』になった。
俺と彩は、それぞれが持っていた車を手放し、七人乗りのワンボックスカーを一台買った。瑛ちゃんの店から。
ワンオーナーの三年落ちで、丸二年の車検付き。走行距離は一万二千キロ。色は、メタリックが入ったダークグレー。
下取り車が二台あるし、思い切って新車にしないかと言ってみたが、乗るのは主に彩で、新車に傷をつけたらショックが大き過ぎるから、小さな傷がある新車同然の中古車がいい、と言い張った。
で、瑛ちゃんが彩の希望通りの車を探してくれた。
夏休みには、この車で瑛ちゃんの家に遊びに行く予定だ。お義父さんとお義母さんも一緒に。
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