1.妻に贈る、母の日

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 彩の仕事も順調だ。  奥山商事の創業五十周年記念イベントに向けて忙しく、FSP(ウチ)も携わっている。  俺ほどではないにしても、彩も残業で遅くなることがあるから、子供たちは彩の実家で晩ご飯を食べることが多い。  彩の両親に頼るのは申し訳ないが、快く協力してくれるのはありがたい。  もうすぐゴールデンウィーク。  真は塾、亮は野球が忙しく、俺と彩も休日出勤もありそうだが、瑛ちゃんたちも帰省するし、まだこの家に呼んでいない姉さんたちが来る予定もある。  大人気なく、ゴールデンウィークが楽しみだった。  そして、ゴールデンウィークが始まり、初日は彩が出勤となった。  真は塾、亮は野球に出かけ、俺は引き受けた家の掃除をしていた。とはいえ、掃除機をかけて、風呂掃除をするだけだが。  さて、昼飯はどうする……?  昼には子供たちが帰って来る。  昼ご飯を用意して行くと言った彩に、「それくらいどうにでも出来る」と言って断った手前、子供たちが帰って来る前に用意しておかなければ。  冷蔵庫を覗くと、三食入りの焼きそばが二袋、生姜焼き用の豚肉、鶏の手羽元、卵やウインナー、野菜室にはじゃがいも、人参、玉ねぎ、キャベツ、もやしなんかが入っている。  飯はあるから、生姜焼き?  いつまで開けてるんだと、ピーッと冷蔵庫に叱られ、ひとまず閉める。ほぼ同時に、ダイニングテーブルの上の俺のスマホが鳴った。  お義母さんからだ。 「はい、もしもし」と、少し緊張気味に応答した。  お義母さん相手に緊張することはなくなったが、突然の電話なんて、何事かと身構えた。
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