1.妻に贈る、母の日

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『智くん? 今、大丈夫?』 「はい」 『今、家?』 「はい」  電話越しに、ガサガサというビニール袋の音や、プラスティックの容器を持った時のバリッという音が聞こえた。 『ちょっとこっちに来られない? 私、今買い物に行って来たんだけど、お惣菜の詰め放題でたくさん買ったの。食べきれないから貰ってくれない?』 「はい。ありがとうございます」 『お昼に食べるなら、ご飯炊いておいでね』 「はい」  十五分後、俺は彩の実家にいた。  台所のテーブルの上には、プラスティックの容器に入った総菜が五つ。蓋が閉まりきらないほど総菜を詰め込まれたプラスティックの容器は、輪ゴムの十字締めによって無残に変形した姿となっていた。 「一つの容器に一種類しか入れられなくて、こんなにたくさんになっちゃった。今日は彩が仕事だって言ってたし、お昼にちょうどいいかと思って。何か用意してたなら、夜にでも食べられるでしょう?」 「助かります。ちょうど、何にしようか考えてたところだったので」 「それなら良かった。うちで食べる分を皿に取るから、ちょっと待っててね」 「はい」  唐揚げ、エビフライ、シュウマイ、鶏の照り焼きに一口コロッケ。  俺にはちょっとくどいが、子供たちは気にしないだろう。 「彩がいないなら、こっちで食えば良かったんじゃないか?」と、お義父さんが居間から言った。 「なに、言ってんの。智くんと子供たちの親睦を深める時間も大事なの。ね、智くん」 「ソウ……デスネ」
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