花言葉を贈ろう

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 その後、小暮さんは事務所内を挨拶して回った。先輩殿は目を真っ赤にして、完全に泣いていた。それを見た若い子が鬼の霍乱だ、とか言ってたので後でチクろうと思う。  そして、いよいよ最後という時に、私は小暮さんを呼び止めた。  女子五人が整列する姿に、小暮さんは何かを悟ったのかにやりとした。 「ん? どうした?」  それでいながらきちんとすっとぼけてくれる小暮さんの優しさたるや。 「さ、先輩殿」  私がそう言って、先輩殿がずいっと一歩前に出る。やはりここは先輩殿しかあるまい。  後ろ手に持っていた花言葉束を取り出した先輩は、それを小暮さんの方へ差し出した。先輩殿の顔はもう真っ赤だ。 「おお、こりゃ参ったな。こんな別嬪から花言葉貰うなんて……」  言いながら受け取る小暮さんの顔も赤い。 「何年振りだろうな、こんな嬉しい贈り物は……」 「よ……喜んで下さって嬉しいです」  先輩殿、分かりますよ私には。  すっごいはしゃいでますよね。 「また豪勢な花言葉束だねぇ……」 「小暮さんをイメージして、作って貰ったんですよ」 「俺を? こんな華やかじゃないよ。小汚いただの爺さんだよ」 「そんな事ないです」  先輩殿の言葉に、小暮さんは凄く嬉しそうだった。 「花まで添えてくれたのか。ポンポンダリアにアサギリソウ……。知らない花もあるけど、どれも綺麗だな」 「小暮さん、そういうの知ってるんですね」  私はちょっと驚いた。そういうイメージが無かったから。 「家内が好きでね。門前の小僧何とやらってやつだ」  にやりと笑う小暮さん。照れてるな、あれは。 「ちょっとびっくりしました」  愛ちゃんがポロリとそう言った。  小暮さんはわはは、と声をあげて笑う。 「意外とロマンチストなんだ。覚えておいてくれ。本当にありがとう。家内もきっと感激してくれるよ」 「今まで本当にありがとうございました」  片手をあげて出ていく小暮さんに、私達は揃って頭を下げた。
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