花言葉を贈ろう

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 ガールズトーク的にきゃっきゃうふふしつつ入店。 「いらっしゃいませぇ」  緑色のエプロンをつけて、頭にキャップを被った、いかにも花言葉屋のお姉さんって感じの人が出迎えてくれた。キャップの後ろから尻尾みたいに髪を垂らしているのが良い。 「花言葉を頂きたいんですけれど……」 「はい、どんなものをお探しですか?」 「ええと、お世話になった人が今日で退職なんですよ。それで、お疲れ様とお世話になりました、セカンドライフ頑張れ的な束にしたいんですけど……」 「あー、それでしたら……あなたを決して忘れません……君を忘れない……楽しい思い出……感謝……門出……祝福とかでしょうか……」  さすがはプロ。店内をちょこまかと走り回って、たちまちのうちに揃えてくれた。 「どう思う、愛ちゃん」 「んー、君を忘れない……はちょっと違うかな。そばいるとホッとします的なのありますか?」 「心安らぐ人、とか?」 「ああ、いいかも」  良いかなぁ?  まあ、君達は好々爺時代の小暮さんとしか仕事してないもんね。 「愛ちゃん、あそこにある老いても元気でってどうかな」 「ちょっと露骨すぎません? やや下品なような……」 「そっか。あ、尊敬ありますか?」 「ございます。ちなみに尊敬しているけれど恋愛ではないと言うのもありますが」  それは面白そう。けど、先輩殿ですら娘レベルだもんな。弥生ちゃんに至っては孫ですよ、孫。わざわざその注釈いるかってなりそう。でも、お姉さんにはナイスジョークと言っておくことにしよう。 「尊敬の方で」 「畏まりました」 「後は……厳しさと愛情を入れて貰って良いですか?」 「……厳しさ?」  小首を傾げるでない。 「昔は厳しかったのよ」 「小暮さんが? 信じられません」  それが幸せなのかは置いといて、あの小暮さんを知らないのはちともったいないように思う。  「じゃあ、あなたを忘れない、感謝、祝福、慕う心、尊敬、厳しさ、愛情で束にしてもらえますか?」 「はい、ではすぐにお作りしますね」  お姉さんは私が言った花言葉をひとまとめにして、リボンやらテープやらで装飾し始めた。後は綺麗な不織布とかで巻くのかな。まあ、任せよう。 「あ、お客様。花はどうされますか?」 「はい?」  花? 
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