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花言葉を贈ろう
ある朝の事だった。
出社して席についてみると、小暮さんからメールが届いていた。
そう言えば、小暮さん今月末で退職だっけ、と白髪頭のちっさいお爺ちゃんの顔を思い出した。
私が入社した時、丁度初めて配属された部署の課長さんだった。
その当時の小暮さんはまあまあ厳しい人だった。
それから二年ほどして部長で五年。
年取ってからの昇進だったのもあったけど、役職定年が来ちゃったのよね。
そっから三年か。
私を鍛えてくれた小暮さんもすっかり角が取れて好々爺になった。
……え、私十年もこの会社にいるの?
今更ながら、そっちにびっくりしてしまった。
「どうりで年取るわけだー……」
私は思わず呟いてしまう。
隣の席に座る若手の男子君は、わざとらしく席を立ちどこかへ行ってしまった。
……そんなに触れにくい話題かね。
最近の若い子はシャイだこと。
……若い子、と言ってしまった。
襲い来る負け感を振り払うため、私はメールに意識を戻すことにした。
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