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「ちょうど五人の貴公子からの求婚を受けておる。会うだけでも会ってもらえぬか。会えば心が揺れるものがおるやもしれぬ」
あまりに熱心に頼み込まれたかぐや姫は、渋々承諾して会うことにした。もちろん最初から誰の求婚にも答える気はなかったため、一人一人会うのも面倒で五人同時に呼び寄せた。
五人は、石作の皇子、車持の皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御幸、中納言石上麻呂足という貴公子たちでそれなりの品も財産も教養も持ち合わせていたが、当然かぐや姫の心をくすぐる人物は一人もいなかった。
石作の何たれはかぐや姫よりも体が小さいが、その何倍もプライドが高く鼻っぱしが強そうだった。
車持の何たれは自分が車を引けそうなでかい図体に筋肉隆々なくせにしっかりと籠に乗ってやってきた。
右大臣何たれはずる賢そうな尖った目つきだし、大納言何たれは意志の弱そうな垂れ目、中納言何たれは一番まともそうだが、ずいぶん老けて見えた。
外見だけの判断ではその内面までは見えないし、それで断っては翁が納得しないと思ったかぐや姫はこの五人にそれぞれ別々の依頼を出した。
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