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覗き穴を確認するまでもなく鍵を開けると見知った顔が困り顔で立っていた。
ほら、やっぱり。
ため息が無意識に出る。
「拓ちゃん……」
俺の顔を見て安堵したのか、少しだけはにかんでみせる俺の幼馴染み。
「何だよ、こんな時間に」
八つ当たりまじりに、ぶっきらぼうに問う。
「ごめんね、夜遅くに。迷惑なのはわかってるんだけど、でもっ、あの……。実は、お願いがあって」
もじもじと俯きながら、華奢な指先をいじる彼女。
白くて細長い指から、彼女の目へと視線を移す。
伏せた瞼は艶があり、睫毛は長くカールしている。
「あのね……」
そう言ったまま黙り込んで上目遣いでこちらを伺ってくる、その眼はアーモンド型で形が良い。
長い黒髪はしっとりと濡れている。
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