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『何をしておる、ヴァーちゃん!!きさんも早く離脱せんかァ!!』
『既にヴァイスフェンサーを覗く、全機の収容は完了してますぅ!!ヴァーシュ君も、早くプラチナへ!!』
『ここで背を向けたら、それこそ狙い撃ちにされます。僕に構わず、プラチナは発進を!!』
『こ、この馬鹿たれ!!きさんを置いてゆくわけには!!』
『ある程度戦い、撹乱した後に、一気呵成の離脱。ヴァイスフェンサーの機動力なら、決して不可能ではありません。』
『しかし、1機だけでは、あまりにもリスクが………!!』
『はい。1機だけなら、そうでしょうね。』
ヴァーシュが言い終わるが早いか、ヴァイスフェンサーの背後より、無数のフォトンライフル弾がアルトアイゼンアビスを目掛けて発砲された。
『やってくれたな、化け物め………!!』
放ったのは、大ダメージを受けながらも、なんとか立ち上がってきたレイブンMk‐Ⅲ。
つまり、人類最強戦力の一角、セレーネ・V・ブランシュタインである。
『仲良く連携を取る気はありません。Mk‐Ⅲの動きを利用すれば、撤退成功の確率は跳ね上がります。ここで分の悪い賭けをするほど、無謀でも自信家でもありませんよ。』
筋道は通っていた。
何よりヴァーシュは、頭に血を昇らせ、冷静な判断ができなくなるタイプでは断じてない。
『………プラチナ、発進を………!!』
『艦長ちゃん………!!』
『これ以上ここに留まれば、轟沈のリスクは飛躍的に高まりますぅ。ツークンフトの隷属種は、いまだ健在なのですから………』
アインストとは比べ物にならないツークンフト隷属種が、これまたアインストとは比べ物にならないペースで増え続けている。
このままでは、多くの者らが決死の覚悟で切り開いた撤退ルートが、水泡に帰してしまうだろう。
ここは、ヴァーシュの案に賭けざるを得ない。
『ヴァーシュ君………必ず帰ってきてください。シンヤ君のことは、もう諦めて………』
『………!!』
ヴァーシュよりシンヤと付き合いの長いマナミに、そこまで言わせてしまった。
この一言で、ヴァーシュの未練は完全に断たれたのである。
『プラチナ、発進!!』
『指定のポイントで待っておる!!艦長ちゃんとの約定、忘れるでないぞ、ヴァーちゃん!!』
発進から加速し、一気に戦闘区域より離脱してゆくプラチナの反応を確認後、ヴァイスフェンサーは改めてアルトアイゼンアビスに向き直る。
『待っててくれたのか?随分優しいんだな。』
『たかが害虫の駆除だ。そう慌てることもあるまい。』
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