第三十五話:暁の決戦

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『ッ………!?何を言っているんだ、あいつは………!?』 『わからない………だけど、ハッタリや、ブラフの類じゃないと思う………』 『だったら、言葉通り、この状況を喜んでるっていうの、あの娘は?』 そして、一同は直後に戦慄することとなる。 それまで、凪の内にあったかのようなパイの念が、まるで。 まるで、大津波のように、一気に膨れ上がっていったためだ。 『『『なッ………!!』』』 『念動、全ッ開………!!』 『グッ………!!』 『おいおい、どうしたマコト!?』 『なんつー念………張られてるフィールドが、目視できるなんざ、初めて見たぜ………』 この局面で、今日一番の。 否。 これまでの戦いも含め、最大、最高潮だろう念の高まり。 これには、優勢に傾いたはずだった教導隊のメンバーも、ほとんどが気圧されたほどだった。 『ぜぇ………ぜぇ………ぜぇ………フフフ………キャハ………キャハハハハハハハ!!』 パイは、嗤った。 確実に肉体へ過負荷がかかっているだろう、全身を覆う苦痛を遥かに上回る、万能感を孕んだ高揚感に。 『パイ、どうして!?どうして、そこまでして………!!』 『そこまでよ、シャオ!!くるわ!!』 『ウォアァァァァァァァァッ!!』 速い。 比喩でもなんでもなく、レイブンMk‐Ⅲボクサーが、一瞬で消えてしまった、そう錯覚してしまうほどに。 『シャオォォォォォォ!!』 『回避ッ………!!』 迫りくるガイストナックルを、身をよじり、なんとか回避するヴァーミリオンだったが。 『よけきれない………!!』 直後、凄まじい衝撃と振動が、シャオを襲う。 『キャァァァァァァァッ!!』 かすっただけ、そのはずなのに。 そのはずなのに、機体がバラバラになったかのような威力。 次はもう、かすることすら許されない。 『こ、このォッ!!』 シルファリオンが乱射するバーストレールガンの弾丸も、ことごとくが消滅。 繰り返す。 弾くでも、阻むでもなく、バリアの出力だけで、弾丸そのものを粒子レベルまで分解したのだ。 『ちょッ………冗談じゃないわよ!!』 『アリーィッ!!』 レイブンMk‐Ⅲボクサーが、シルファリオンへとターゲットを変更した瞬間、ヴァーシュが放った特殊弾頭、スパイダーネットが直撃。 レイブンMk‐Ⅲボクサーは、特殊な粘着性の糸に覆われ、これで機動力を大幅に削がれるはずだった。
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