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第二十九話:混沌へと続くマトリクス
◯
『ウォアァァァァァァッ!!』
『くたばりやがれ、クソがぁ!!』
銃声と共にばら蒔かれる、ゴーストMk‐Ⅱフルカスタム、イルリヒトからのアサルトライフルの鉛弾に、スナイピング仕様のゴーストMk‐Ⅱからのメガビームライフル。
特殊戦技教導隊のクロード・カージュに、カゲトラ・アマノは、咆哮と共に、ありったけの弾薬を「敵」へと見舞う。
咆哮。
違う。
それは、絶叫。
あまりにも絶対的で、圧倒的な「恐怖」に呑まれまいと、必死で声を絞り出しているに過ぎなかった。
そして、その攻撃のことごとくは、吸い込まれるかのように敵へと着弾。
直撃だった。
『や、やったか?』
『だといいんだが………』
巻き上げた砂塵とガンスモークにより、モニター越しの視界は悪く、「敵」の無事如何の確認は困難を極めたが。
直後、コックピット内に轟音が響く。
攻撃警報。
それが意味するところはただ1つなのだが、2人は理解することができなかった。
正確には、理解をする前に、「敵」から放たれた無数のチタン製ベアリング弾に晒され、撃墜されてしまったのだ。
一瞬の出来事であり、脱出装置の起動は確認されていない。
更に、内部の生体反応も、完全に消えていた。
『『………ッ!!』』
僚機と、戦友の突然過ぎる死に、動揺する間もない。
何故なら、「敵」は既に己ら。
即ち、アポロ・フェイリオスのレイブンMk‐Ⅱと、フォッグ・ロッケンフィードのアルビオン特式を狙い、一気に加速してきていたのだ。
『速い………!!』
『大した踏み込みだ。しかし!!』
特式は、すかさずカウンターにドリルブーストナックルを放つ。
いくら速いとはいえ、所詮は一直線、猪突猛進といったチャージなど、真っ正面から撃ち落とすのはさほど難易度の高いことではない。
そのはずだった。
「敵」が、着弾の寸前、短距離空間転移による回避を行うまで、少なくともフォッグはそう思っていた。
『しま』
しまった。
言い終わるが早いか、フォッグの意識はプツリと途切れる。
回避と同時に、特式の背後へと転移しつつ、死角より超高熱を纏った電熱衝角による斬撃は、コックピットへと直撃。
パイロットは即死と、これならば、再生能力に秀でた機体だろうとなんの意味もありはしない。
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