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『ッ………!!』
紙一重、なんとか回避には成功したが、コックピット内に警報が鳴り響く。
『エネルギー残量、10パーセント以下。機体損傷度も、80パーセントオーバーか。』
実質戦闘不能である以上、撃墜こそ免れたが、それも時間の問題。
ヴァーシュもセレーネも、口にこそ出さないが、己でも驚くほど冷静に受け入れることができた。
完全敗北である。
圧倒的などという表現では到底追いつかない、いっそのこと馬鹿馬鹿しくなるくらい、ベーオウルフは、アルトアイゼンアビスは強すぎたのだ。
『ふむ。どうやら、雑魚害虫共の駆除も、粗方済んだようだな。』
セレーネが率いていたアザトースの部隊同様、各国の精鋭らも墜とされるか、撤退したのだろう。
あらゆる方向から聞こえてきていた爆音も既にほとんどなく、手の空いたツークンフト隷属種らが続々と集まってくる。
『囲まれたか。』
『クッ………』
つまり、これで撤退の目も限りなくゼロに近い。
後は、一思いに潰されるか、嬲られながらジワジワと削られるか。
どの道、「死」がすぐそこまで迫ってきている。
『『………』』
『この期に及んで、闘志は消えていないか。』
『無様に泣き叫び、命乞いでもすれば満足か?』
『誰が、お前の望むことをやってやるかよ。クソッ………!!』
未練はある。
無念も禁じ得ない。
しかし、余りにも絶望的過ぎる状況に、2人は最後の意地にと虚勢を張るくらいしかできなかった。
『ただのやせ我慢か。いたぶるのも面倒だし、速やかに叩き潰し』
ベーオウルフが言いかけた、その時だった。
辺りを覆うかのように、凄まじい空間震動警報が、レイブンMk‐Ⅲとヴァイスフェンサーのコックピット内に響き渡る。
『………!?これは………!!』
『嘘だろ………!!』
驚愕に目を見張る人間達の目線は、己が真上の空へ向けられ。
『ほぅ………』
ベーオウルフの視線も、自然に同じ方向へ向けられるのを、ヴァーシュは見逃さなかった。
つまり、これは。
この、余りに巨大なクロスゲートが、突如として南極上空に現れたのは、ベーオウルフにとっても計算外、イレギュラーなのだとヴァーシュは気づく。
『まさか、この災厄の門が起動するとはな。誰の仕業かわからんが、よほど貴様らに死んでほしくないと見える。』
『何を言っている………!?』
『特に意味はない。なに、今の発言も、我の予想に過ぎん。忘れていいぞ。』
しかし、ベーオウルフに一切驚いた様子はない。
それどころか、この状況を楽しんでいるような様子すらある。
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