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***
僕は目が覚めて、自分なりに考えた。
何か必要な物は、あるのか?
持っていかなければいけない物は、あるのか?
(ポカリ?いやいや、点滴しよったらいらんのだろか?)
(手ぶらで行くって言うんもなー。)
(えっ。ちょっと待てよ。個室になったってことは、部屋が変わったってことか?え?何号室に行ったらいいんやし。)
色んなことを、色々考えながら用意をして、僕は車を走らせた。
外は相変わらず寒くて、嫌気がさす。
***
「すいません」
病院についてすぐ、受付の女性に僕は話しかけた。
「美空良子の孫なんですけども」
「あ、はいー」
不思議そうな顔をする事務員さんに、お見舞いに来たこと、何号室にいるのかわからないことを説明すると、病室の番号を教えてくれた。
エレベーターに乗り、4の数字を押し、扉が開くのを待つ。
待っている間も、看護師さんであろう人達がうろうろと歩いていて、なんだか格好良く見える。
(病院には看護師がよーけおるんやなぁ。)
見慣れない環境を、物珍しく観察する。
***
403号室。美空良子。
僕は扉の右側のプレートを、よくよく観察してから扉を開けた。
(ん?)
扉を開けると、カーテンがすぐに目に入った僕は、様子を窺うようにカーテンに手を当て、中を見る。
(お。え……。)
カーテンの内側には、大きなベットの中心で、横になっているばーがいる。
僕の存在に、気がついていないのか、寝ているのかよくわからないが、窓際に置かれた簡易のソファのような物を目指して、僕はゆっくりと足を進めた。
物音を立ててしまうと、起こしてしまうかもしれない。
そう、思ったからだ。
部屋の中には、病院もののテレビドラマでよく見る、脈を計る機械のような物が置かれていて、機械の上には、点滴の袋のような物が、2つぶら下がっている。
ばーの口元には、病院もののテレビドラマでよく見る、カラスのくちばしのような形の、透明のマスクが取り付けられていて、頭の上に取り付けられた機械の中では、何故か水のようなものが沸騰している。
入院している様子は、はじめて見た僕だが、素人ながらに、なんとなく理解した。
(あんまりよーないんやなぁ。)
4人部屋から個室に移動し、心臓の鼓動とともに、ピコンピコンと動いている機械の画面を観察しながら、悟る。
***
数字が、いくつか並んでいる。
はじめて見る機械を、僕は静かに、興味津々で見た。
緑色の線は、どうやら心拍数らしいことは、緑色の数字を見て、なんとなくわかった。
(これはたぶん心臓やんなぁ。)
(ほなこれは血圧か?)
なんとなく、そんな気がする。2つ並んだ数字。
96。
68。
(んー?血圧にしては低いか?)
92。
(これはほな酸素のあれか?)
さらに観察するも、脈拍らしい数字以外は、なんの数字なのかはっきりとわからない僕は、点滴がぶら下げられた機械の観察をするのをやめて、ばーの頭の上の機械に向いて足をゆっくり静かに移動させる。
(これはなんやろか?)
水のような物が、沸騰している。
機械の横には、同じサイズの中身が空っぽの機械が壁に取り付けられている。
透明の容器に、緑色のふたのような部分。
そこから伸びる、ホースのような部分。
(これは今は使われてないんだろうなぁ。)
隣で沸騰する機械と比べて、自分なりに納得する。
***
隣で水のような物が沸騰している機械は、透明の容器に、水のような物が入っていて、その中の水のような物が、ぶくぶくとなっている。
銀色のふたのような部分には、数字がついたレバー。
ダイヤル式?のような回す部分が取り付けられていて、ホースの先をたどって行くと、どうやら口に取り付けられた酸素マスクにつながっている。
(この水がぶくぶくで酸素作いよんか?)
不思議に思いながら観察していると、
「コンコン」
と、ドアがノックされる音のあとに、扉が開く音がした。
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