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苦手です
五十嵐円の目の前。同じ課の先輩、十和田拾が頬杖をつき笑いかける。それが妙にさまになっていて鼻につく。
「見てないで手を動かしてください」
「んー、そうだな」
仕事も残業に突入し、終わりがまだ見えてこない。
現実逃避をしたところで仕事が終わるわけではないのだから手を動かしてほしい。
「十和田さん」
「拾ちゃん。そう呼んでくれたら頑張れそう」
それを無視して仕事を進めていく。
「俺のことをそう呼んでいたじゃない」
円がまだ中学生のころ、確かにそう呼んでいたが昔のことだ。
「仕事をしてください」
あまりにしつこいのでぴしゃりというと大人しく仕事をし始めた。
円の前ではうざいのに、他の人に対しては頼りがいがある仕事のできる男なのだ。
「むかつく」
ぼそりと呟き、パソコンのキーを打つ。
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