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「それに、好きな人がいると言われて、ショックだったんだ。会いに行けないほどにな。そうしたら円も受験だとかであえなくなって……」
「それなら、俺のことが好きだって正直に言えばよかったじゃん」
「百さんと一ノ瀬さんから、円は受験生だから高校生になるまで待ってと言われて。だけど全然会えなかった」
その時は円が十和田のことを避けていたからだ。
「志望動機は円に会うため、だからな」
「馬鹿じゃないの」
そのために選んだなんて。どれだけ会いたかったのだろう。
どれだけ思ってくれたのだろう。
「円、顔が緩んでる」
そう、頬に手が触れる。
「そういう十和田さんも緩んでるよ」
「そりゃ、円も俺とおんなじ気持ちだったとわかったらさ、嬉しくて」
その手が今度は唇へと触れた。
「別に俺は十和田さんのことなんてなんとも思ってないから」
「とかいいつつ、好きだろ、俺のこと」
唇がふれ、舌が口内を愛撫する。それが気持よく小さく声が漏れる。
好きだ。痛い思いは二度としたくなかったのに。
つれない態度をとってまで近寄らせないようにしていたのに。
十和田が傍にいる。それが本当は嬉しかったのだ。
「ん……」
好きでなければ腕を絡めたりしない。
「円、お前の部屋に行っていい?」
はぁ、甘く息をはき、ささやく。
「いいよ」
「それじゃ、行こうか」
手を握りしめられて指を絡めた。
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