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百川と話をしているとき、たまに千坂と目が合う時がある。しかも全然キラキラとしておらず、嫉妬丸出しという顔でだ。 まさか、それと同じだということか。それとも自分にはつれないくせにと思っているのだろうか。
「五十嵐、うしろ」
百川の視線が円からさらに上へと向けられる。振り向くとそこに立っていたのは話題の人物が立っていた。
タイミングがよすぎる。まさか話を聞かれていないだろうか。気まずいなと思いながら十和田に声をかけた。
「あ……、十和田さん。なにかご用で?」
「二人にお土産だ」
とテーブルの上に紙袋を置く。袋にプリントされているロゴはコーヒーチェーン店のものだ。
「なんですか、これ」
「期間限定のラテ」
袋を開いて中身を取り出す。ふわりと苺の匂いがした。
新作や期間限定のメニューが出ると必ず買いに行く。隣で飲んでいるので十和田に聞かれたこともある。それで買ってきてくれたのだろう。
「あぁ、今日からでしたね。ありがとうございます」
百川に一つ、そして円に一つ。十和田の分はない。
「まさか、発売日を知っていて買いに行ったんじゃ」
「昼を食べに行った帰りに、看板を見かけてな。珈琲を飲みたかったし」
ついでだというが、円が気にしないようにそう言っているだけかもしれない。
貰ったから、新作だって、美味そうだったから、そんなことを言いながら円が好きそうなものをくれるのだ。
餌付けしようとしている、そうおもっていて、十和田の気持ちを考えたことなどなかった。
「円、もしかして具合でも悪いのか? 顔が赤いぞ」
目の前にぬっと手があらわれて、驚いた円はそれを払いのけた。
「ひどいな、熱がないか触るだけだ」
「大丈夫ですから。これ、ありがとうございます」
先に戻ります、そう告げてラテを一つ手に取る。
「あ、あぁ」
百川にまたなといい、いったんデスクへと戻るとラテを置いてトイレに向かった。
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