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鏡に写った頬を赤く染める自分。それを冷ますように何度か顔を洗うが熱は簡単にひいてくれない。
「はぁ、なんだよこの顔は」
何を意識しているのだ。そのままずるずると床へ座りこんだ。
「おい、大丈夫か」
その声に驚いてそちらへと顔を向ける。
「なぜ、ここに」
追ってくるのだろう。
「心配で戻ればトイレの方へ向かっていくのが見えてな。やはり具合が悪いのだろう。早退した方がいい」
円がこうなっているのは目の前にいる男のせいなのに。
意識して振り回されるより、十和田に気持ちを聞いてしまえばスッキリするのではないだろうか。
口を開きかけるが、言葉がでてこない。
どうして聞けないんだと心の中で自分に問う。
結局、十和田に告げたのは、
「もう平気です」
という言葉だった。
「いや、だが……」
「戻りましょう。ラテも楽しみですし」
言いたいことを胸の奥にしまい込んで十和田の背中を押す。
「そうだな」
何も言わない円に、十和田もそれ以上は聞いてこなかった。
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