意識してます

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 十和田はいつもの通りに仕事をしている。だが、一ノ瀬に言わせればそうでないようだ。 「円、十和田に何かしたか」  と聞かれた。しかも円が何かをしたと思われている。 「別に。ご飯を食べに行く約束をしただけ」  眉間のしわがとれ、目が驚きの色へとかわる。そんなになるほどかと円は苦笑いをする。 「大げさ」 「そりゃ驚くだろう。あんなにつれなかったのに」 「ん、そうなんだよね」 「まぁ、仕事はしているようだからよいが」  食事に行くくらいで、仕事が手につかないなんてことは流石にないだろう。  それで残業になるようだったら、食事はキャンセルするだけだ。  あれから仕事は順調に進み、残業をすることなく終える。 「円、行こうか」 「はい。お先に失礼します」  周りに声をかけエレベーターへと向かうと、女子二人に話しかけられる。 「お疲れ様です。上がりですか?」  上目遣いで十和田を見る。可愛い仕草だ。 「あの、これから二人でご飯に行くんですけど、一緒にいきませんか?」  美味しいご飯に可愛い女子。きっとたのしい食事になるだろう。ただ、それは十和田のみ。円の方には一切視線を向けない。  親が社長という肩書なしで円がモテたことはない。別に女顔というわけでもなく、背丈も175センチはある。だが、男としての魅力がないのだろう。  なんか嫌な気分だ。 「あの」  帰りますと言おうとしたが、 「今日は五十嵐と約束しているから、一緒には行けない」  円の背中をぽんと叩き、彼女たちには笑顔を向ける。 「そうなんですね。また今度」 「誘ってくれてありがとうな」  二人に手を振り、そのまま円を連れて階段へと向かった。 「え、下まで歩くんですか」 「あぁ。円との時間を邪魔されたくない」 「何を言っているんですか」  その言葉に口元が緩みそうになり、あわてて手で隠した。
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