第十四章 この身体も、その心も。

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 タクシーの中で、老人は身寄りに連絡を取っていた。 「うん。今、親切な人に助けてもらって、タクシーで総合病院に向かってる。手近な者を寄こしてくれ」  通話を切った老人はサングラスを取り、瑠衣を直に見た。 「病院に、身内が来ることになった。着いたら、君はそのままこの車で戻りなさい」 「でも、車椅子に乗せたりとか、それを押したりとか」 「大丈夫。多分もう、誰かが到着してるよ」  老人の言った通り、タクシー乗降所にはスーツの男が3名待っていた。 「あ、ホントだ」 「な? 私はもう大丈夫だから」  そう言って、老人は札を数枚瑠衣に握らせた。 「あそこで誰かイイ人と待ち合わせだったんだろう。これで、何か美味しいものでも食べなさい」 「こんなにたくさん! 要りません!」  いいからいいから、と老人はタクシーから降りてしまった。  後は、スーツの男が用意していた車椅子に、ちょこんと座って手を振っている。  その愛嬌に、瑠衣も思わず手を振っていた。  それを合図にタクシーは走りだしてしまった。 「どうしよう。お金、こんなにたくさん」 『あそこで誰かイイ人と待ち合わせだったんだろう。これで、何か美味しいものでも食べなさい』 「あ! 寿士さん!」  瑠衣は、慌てて寿士に電話をかけた。
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