第十三章 告白と婚約と

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「あの~、そろそろいいですかね?」  寿士は車内を覗き込んできた運転手の声が、救いの手に思われた。 「こいつ、家まで送ってやってください」  瑠衣をタクシーから降ろし、寿士は陽詩一人を残して車外へ出た。 「お客さん、どちらまで?」 「……」  呆けたように、ただ涙を流し続ける陽詩だ。  代わりに、寿士が行き先を告げ、ようやくタクシーは走り去った。 「寿士さん……」 「瑠衣、平気か?」 「陽詩さん、大丈夫かな」 「知るか、あんな奴。もう、他人だ」  この時、瑠衣は寿士を冷淡な人だと思ったが、マンションに戻ってから事情を聞いてうなずいた。 「妊娠を盾にとって、俺と結婚しようとしたんだよ。陽詩は」 「そうだったの……」  紅茶を一口飲んで、でも、と瑠衣は寿士に顔を向けた。 「でも、それだけ陽詩さんは、寿士さんのこと好きだったんだと思う。愛してたんだと思う」 「瑠衣は優しいな」  寿士は微笑んで、瑠衣の肩を抱いた。 「じゃあ瑠衣は、俺が陽詩と結婚してもいいの? ずっと、愛人のままでいいの?」 「それは……」  嫌だな、と瑠衣は考えた。  僕だって、できることなら寿士さんを独り占めしたい。  僕だけを、見つめていて欲しい。
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