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「じゃあ、寿士さんは一生独身だね」
「瑠衣」
「大丈夫。僕は捨てられるまで、ずっと愛人でいてあげる。寿士さんが、お爺ちゃんになっても」
「いや、待てよ。瑠衣、それは」
寿士がそこまで言ったところで、スマホが鳴った。
「父さんだ。何だろ」
もしもし、と気軽な気持ちで寿士は電話に出た。
しかし、父の言葉は重いものだった。
『寿士、お前18歳の少年と同棲してるそうだな』
「そうだけど。何で知ってるの」
『しかも、どこの馬の骨とも解らないΩだそうじゃないか!』
「だから、何で知ってるの!」
『仲人さんを通して、宮迫さんの息子さんから知らされた。婚約指輪までしてる、だって!?』
やられた、と寿士は唇を噛んだ。
陽詩のやつ、最後の悪あがきを!
『一緒に旅行して浮かれてるらしいが、まさかお前が言ってた好きな人、というのは、それか!?』
「それ、って何だよ。瑠衣は品物じゃないよ!」
『そのうち紹介する、とか言ってたが。紹介するまでもない、捨てなさい!』
「嫌だ!」
『寿士!』
父親の怒声は、瑠衣の耳まで届いていた。
彼はただ、小さくなって震えるしかなかった。
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